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【秋風の頃】 「真田さん、受け付けからです。面会の方がお見えでそうですが」 課につながった内線電話を受けた女性が、真田を呼ぶ。 「今お電話回しますね」 ほどなくして真田の机の電話が鳴った。 「はい、真田です」 「オレ、俺! 丸井〜。今ちょっと時間ある?」 「……!」 突然のことだった。 パソコンのデータを確認し、仕事が勤務時間内に終わらせられることを確認して、席を立った。 「少し休憩をいただきます。1階の喫茶店にいます」 「真田ー、ひさしぶりぃ」 玄関で、丸井は真田を待ちながら受付嬢と親しげに話していた。真田がエレベーターから降りてくると彼女達に名刺を渡して「暇があったら連絡チョウダイ。合コンしよっ」とアピールをしてから、会話を切り上げる。 「どうしたんだ急に」 「いや、用事でこの近くまで来てさ、真田の会社が目の前だったからちょっと寄らせてもらったんだ。迷惑だった?」 「忙しい時期ではないので少しなら大丈夫だ。コーヒーでもどうだ」 喫茶店に入り席につくとすぐ、真田はウエイトレスに「コーヒー2つ」とオーダーをする。 丸井は上着を脱ぎ、その上に書類の入っているような封筒を置いた。 確実に年月は過ぎている。風船ガムを膨らませていた赤毛の丸井も、今は目立つからという理由で髪を普通の茶色に染め、スーツに身を固めた会社員だ。 「ホントごめんな。いきなりで」 「いや、こちらこそ……。最近は連絡もしないで申し訳ない」 「俺はけっこう皆と連絡したりしてるよ。ジャッカルは今ブラジルに帰ってるけどメールだとそんな感じ全然しないし。戻ってきたら皆で会おうかって話してるんだけどさ……」 そう言って、丸井は、あ、と口をふさいだ。 「……真田は、やっぱダメだよね……」 ブラックのままのコーヒーを真田はひとくち飲んだ。すぐに応えられる返事がみつからなかった。 「……ユキちゃん、具合どぉ?」 丸井が、話題を換えた。それこそが、近くを通りかかった程度でわざわざ仕事中の真田を呼び出した一番の理由かもしれない。 「あまり……いや、悪くはない……横になっていることが多いが」 あまり明るくない話題を、それでも真田は淡々と語った。 「お見舞い、いきたいけど、かえって疲れさせちゃうかなって思ってさ」 「そんなことはない。幸村も喜ぶだろう。いつでも来てくれて構わん」 「だって、真田との時間、邪魔しちゃうしさ」 「二人だけの時間ならいくらでもある」 ……あ、と丸井は心の中で呟く。 真田の声が優しい。 卒業して、別々の道を進んで数年、それぞれ変わったり変わらなかったりするけれど、一番変わったのも、変わらないのも真田だ。 幸村の話をするときだけ、声が優しくなる。 「じゃあ、今度またみんなで行くな。赤也とか、仁王とか誘って」 「是非、そうしてくれ。こちらから誘う余裕もなくて、申し訳ない」 「計画しておくから、ユキちゃんの様子みて連絡してくれよな」 「ああ」 会社の入り口で丸井と別れた。 ふと、ポケットの中の携帯電話に触れる。 声が聴きたくなった。理由はそれだけでいい。 仕事に戻る前に、真田は、会社のロビーの片隅から自宅に電話を入れた。 「銀世界。」という話を書いて、一番最初に書いた続編がこれでした。 何が書きたかったのかというと、真田と幸村の世界はふたりきりではなく、 かつてのチームメイトが祝福し、応援してくれている、ということです。 ちなみに私はブン太がお気に入りで、ブン太はゆっきーと仲良しだと 勝手に思い込んでいるので、これから先も何回か出てきます。 back |