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【たとえばこんな世界】


 春。
 といっても、桜はとうに散り、新入生は新しい学校やクラスに慣れはじめた頃。
 立海大附属中テニス部には、地獄の仮入部期間を終え正式に部員になった新メンバーにユニフォームができあがり、それまで体育のジャージで練習に参加していた部員も揃って憧れの「立海大附属」の芥子色を身に纏うことができるようになった頃。




 ある日の昼休み、テニス部の部室で。頭を抱えている部員が6人ほどいた。


 彼等は昨年秋、3年の先輩が引退してからレギュラーとして活躍しているいつものメンバーだった。
 立海大附属テニス部は、あまり集団行動が好きではない。ミーティング以外はほとんど全員が集まることはないし、練習後の寄り道や大会へ向かう時なども数人の仲良しグループ単位で、それを学年代表がまとめて、更に部長、副部長が統率しているという感じだった。
 そんな中でもっとも人数の多いグループが彼等レギュラーである。
 練習に特別メニューが加わったり、レギュラーだけの小合宿なども行われ、一緒にいる時間が多くなれば自然と交流も深くなる。
 唯一の2年生の切原赤也も、部活中は同学年の部員より3年の先輩にくっついて回る方が多くなっていた。
 が、2年生エースと呼ばれている切原も部活が終わればただの中学2年生だ。
 新しいクラスにようやく馴染み、さて今日の昼休みは学食にするか購買のパンにするかとクラスメイトと話していたときのことだった。
「切原くん、ちょっとよろしいでしょうか」
 教室の入り口で彼を呼び止めたのは、3年生の柳生だった。
 クラスメイトに昼を一緒できないことを謝って、赤也はそのままテニス部部室へ連れていかれた。
 そして、そこでなにやら不穏な雰囲気の先輩四人と遭遇することになるのである。


「赤也のところではそういう話は聞かないの?」
「うーん全然」
「ある意味、2年生がもっともニュートラルなのかもしれませんね」
「俺達が一体何しろって言うんだよ。人の噂もなんとやらだし、放っておけよ」
 今日は小遣いも入ったし、学食のA定食にしようと思っていたのにな。通り道の購買で買ったパンをちぎって口に入れながら、それぞれ弁当や買いパンを食べつつ、明るいランチタイムとは程遠い雰囲気に包まれていた。
「俺の見た範囲では、最も騒いでいるのは1年。この話題について多少なりとも感心を抱いているのはおよそ40%、うち男子が3割で女子が7割。続いて3年。こちらも4人に1人の割合だ。ちなみに、俺に直接真相を聞いてきた勇気ある奴は3名」
 弁当箱のふたを閉じ、ごちそうさま、と手を合わせてから柳がいよいよ本題について話しはじめた。
「そんなウワサ話ごときに振り回されてるほうがアホらし」
「……それがそうでもないんだよ、仁王……」
「コートの外から部活動を見学する人間が去年より2割ほど増えている。誰かのファンや、テニスに興味はあったが入部しなかった者ではなく、あからさまに好奇の目でこちらを見ている。本人達もそれに気付いていて、それなりに困惑しているようだ」
「そんなん、自分達でまいた種じゃ」
「そんなこと言うなよ! みんな、友達じゃねーか。友達が困ってるからこうしてみんなで集まってるんだろ」
 しらけムードの仁王と対照的に、ジャッカルは椅子を蹴倒す勢いで立ち上がった。
「本人抜きでこういった話をしなければ成らないのは、いささか不本意でありますがね……」
「それでさあ」
 食後のデザート、とガムを口に放り入れて、丸井が堂々回りの会話をうまくまとめた。 「男テニ部長と副部長はデキてます、って噂なんだけど。どうすんのさ」






真田と幸村が出てこない真田幸村3年生春。

前回に引き続き1話の冒頭だけしか書いていないものを無理矢理ひっぱりだしてきた。
気が向いたらちゃんとオチまで書きます。





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